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高松高等裁判所 昭和53年(う)211号 判決 1978年9月12日

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役三月に処する。

原審における未決勾留日数中四七日を右の刑に算入する。

理由

本件控訴の趣意は、記録に綴ってある松山地方検察庁検察官検事山路隆作成名義の控訴趣意書に記載のとおりであり、これに対する答弁は弁護人松本修二作成名義の答弁書に記載のとおりであるから、ここにこれらを引用する。

所論は、原判決は公訴事実と同一の事実を認定し、「被告人を懲役三月に処する。未決勾留日数中五〇日を右刑に算入する。訴訟費用は被告人の負担とする。」旨の判決を言渡したが、右判決は、本刑に算入しうる未決勾留日数四七日を超過する日数を未決勾留日数として本刑に算入した点において、刑法二一条の適用を誤ったものであり、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免かれない、というのである。

よって案ずるに、原判決が被告人に対する本件公訴事実のとおりの事実を認定処断した本刑に、右公訴事実につき発せられた勾留状による未決勾留日数四七日(昭和五三年五月四日勾留、同年六月二〇日判決宣告)を超える五〇日を算入していることは、原判決及び本件記録に徴しまことに所論のとおりである。

なお記録によれば、被告人は昭和五三年四月一三日別件覚せい剤譲渡の事実により逮捕され、同月一五日同事実につき発せられた勾留状の執行を受け、さらに一〇日間勾留期間が延長され、その満了日である同年五月四日本件覚せい剤自己使用につき求令状により起訴され、同日同事実につき新たに発せられた勾留状の執行を受けるとともに、右別件勾留については釈放の手続がとられたこともまた明らかである。

原判決には説示するところはないが、本件未決勾留日数の算入に当り、前記昭和五三年四月一五日付勾留状による勾留の日数をも含めたものと解される。

そこで、その当否についてみるに、刑法二一条にいう算入の対象となる未決勾留の日数は、起算が勾留の初日からであり、起訴前のそれを含むことはいうまでもなく、終期は判決言渡の日の前日までであり、原則としてその刑の科された罪について発せられた勾留状による拘禁の日数か、少くとも併合審理された公訴事実について発せられた勾留状による拘禁の日数をさすものというべきであり、何ら起訴されていない被疑事実について発せられた勾留状による勾留は、たといそれが起訴された罪の捜査取調べにつき実質上利用されたものとしても、起訴された罪の本刑に算入しえないものといわなければならない。答弁書中これと見解を異にする所論はにわかに首肯しがたい。してみると、原審の措置は前記法条の解釈適用を誤り、本来本刑に算入しえない未決勾留日数をこれに算入した違法のものというべく、それは判決に影響を及ぼすことが明らかな場合に該当するものと認められるから、原判決は破棄を免かれない。

よって、刑訴法三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書により、当裁判所において直ちに判決する。

罪となるべき事実、証拠の標目、累犯前科、法令の適用(但し訴訟費用の点を除く)はいずれも原判決記載と同一であるので、これを引用する。なお原審及び当審における訴訟費用は刑訴法一八一条一項但書により、これを被告人に負担させない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 秋山正雄 裁判官 緒賀恒雄 川上美明)

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